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「浜村渚の計算ノート」青柳碧人 講談社文庫



数学娘に嫉妬する物語

「数学」って、“できる人”と“できない人”の差が大きく出ます。
わたしにとって算数、数学は小、中、高と常に悩みの種であり続けました。
試験ともなると、得意教科で稼いだアドバンテージがいとも簡単に雲散霧消する有様。
「この世は、数学が得意な奴らを中心にできているに違いない」と少々卑屈な考え方になっても仕方ないのではなかろうかと思います。

ところが、本書では、その考え方は反対の立場におかれています。
数学は国家レベルで抑圧されており、一人の天才数学者が数学の復権を目指してテロが起こすというぶっ飛んだ設定になっているからです。

首謀者である「DR.ピタゴラス」は、自ら開発した教育ソフトに施した催眠により、教育を受けた国民全員を無差別にテロリストにすることを可能にしています。
それに対峙するのは、数学音痴の警視庁対策本部の面々と「近所でも評判の数学娘」として見出された市立麻砂第2中学校2年生の「浜村渚」。

『テロリストと天才少女の対決モノ』なのですが、犯人との対峙の仕方は既存の作品にはないものです。
浜村渚は数学に関しては天才ですが、その力で確率や統計を駆使し、プロファイル的に犯人にたどり着くような話は一個もありません。

では、どうやって犯人にたどりつき事件を解決に導くことができるのか。
とにもかくにも、キーワードは「数学」です。
テロリストたちはテロを起こしてでも数学の復権を望んでいるわけすから、半端なく数学を愛しています。
一方、浜村渚も単に計算式を解くのが得意とか、そこにある法則性を見抜くのが得意なだけではありません。
インド人が見出した「0」や、ルドルフ・ファン・ケーレンが生涯かかって導いた「ルドルフの数字」に素直に感動し、人類が積み重ねてきた英知としてまっすぐに数学を愛しています。
立場を正反対にしながら、数学を愛する者という共通項による「分かりあった」部分が、事件解決の糸口になっているのです。

わたしのように「数学」を苦手としてきた者でも、この「分かりあい」は伝染しました。
それを通じて気づかされるのが、数学が散文的で、無機質な存在ではなく、いかにロマンに溢れ、好奇心をくすぐる存在であるかということ。
浜村渚が、その数字、数式、法則への感動を口にするたび、こういう気持ちを学生のときに持てていたら少しは数学が好きになれていたんじゃないかと思ってしまいます。ちょっとした後悔とともに。

本作では、数学がまともに義務教育されない世界において「なぜ、浜村渚が数学を得意になったのか」ということについては語られていません。
今後語られるかわかりませんが、それがわたしの傍らにもあるようなものであったなら、なおのこと妬けてしまうでしょうね。


数学好きよりも、むしろ数学嫌いな方が得られる感動は大きいかも。
それでは、みなさんも楽しい読書生活を。

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Comment

No.1 / リーフ [#DvI991tw] 数学や社会の面白い点をねらい打ち

『浜村渚の計算ノート』は、数学ニガテでも吸い寄せられて
しまう不思議な作品でした。
さすが塾の先生ですねぇ~。

『判決はCMのあとで』という作品も最近出ましたね。
こっちは裁判をテレビ中継する、と言うちょっと変わった
はなし。こっちもなかなか面白かった!

青柳碧人さんの作品たちは、なかなか油断ならないですね。
心憎い演出が備わったかた、との分析記事も。
http://www.birthday-energy.co.jp/
他の作家さんや有名人の事も、索引から記事を探せるので、
不思議と読んでしまいます。・・・閑話休題。

数学や社会の面白いと思う点を、きっちりと押さえてるあたり、
さすがですね~。

2012 03/10 (Sat) 01:46 編集

No.2 / きすいこ [#-] Re: 数学や社会の面白い点をねらい打ち

リーフ様
コメントありがとうございます。
塾の先生なんですね。
数学に興味をもたせるツボみたいなところが、作品にも活かされているのでしょう。
分析にある「私生活を犠牲にさえできれば、名前はもっと売れるはず」というのが、作家さんの宿命のように感じられました。
面白いサイトの紹介ありがとうございます。

『判決はCMのあとで』
タイトルからして、面白そうな匂いがしますね。
本屋さんで在庫検索したのですが、ヒットせず。(わたしの入力ミスかも?)
ネットでも買えますので、ぜひ購入したいと思います。

それでは、楽しい読書生活を。

2012 03/11 (Sun) 03:23

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プロフィール

きすいこ

Author:きすいこ
年齢:34 性別:おとこ
<仕事>
地方公務員
<好きな作家>
有川浩 加納朋子 田中芳樹 神坂一
<好きな漫画>
「最終兵器彼女」「SLAM DANK」「ピアノの森」

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